目次* 1. イーサリアムの新構想|BTC並みの簡素化を目指す* 2. ブテリン氏提案「L1簡素化」で100倍高速化へ + 2.1. 仮想マシンを「RISC-V」ベースに移行 + 2.2. 「レガシーモード」で既存資産との互換性を維持 + 2.3. プロトコル仕様の標準化・統一による簡素化* 3. イーサリアムL2の現在地と今後のロードマップ + 3.1. DencunアップグレードとL2利用の急増 + 3.2. 「Fusaka」以降のロードマップ|L1・L2のさらなる強化へ* 4. コミュニティからの反応と今後の課題## イーサリアムの新構想|BTC並みの簡素化を目指す**イーサリアム(ETH)共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は2025年5月3日に、自身のブログで「The Simple L1 Sharding Proposal(L1簡素化シャーディング提案)」を公開**しました。この提案は、**複雑化したイーサリアムをビットコイン(BTC)並みの単純な構造へと作り直し、処理速度を最大100倍まで向上させることを目標**としています。ブテリン氏はX(Twitter)で「ビットコインの最大の強みの一つはプロトコルの単純さだ」と述べ、今後5年かけてイーサリアムをビットコイン並みに簡素な基盤へと作り変える構想を強調しました。> One of the best things about Bitcoin is how simple it is. This simplicity has lots of benefits. Let's bring those benefits to Ethereum. pic.twitter.com/YwmVaOCPlP> > — vitalik.eth (@VitalikButerin) May 3, 2025> > > ビットコインの大きな魅力の一つは、そのシンプルさにあります。このシンプルさは、さまざまな利点をもたらしています。> > > > > こうした利点を、イーサリアムにも取り入れていきます。> > > > ## ブテリン氏提案「L1簡素化」で100倍高速化へ### 仮想マシンを「RISC-V」ベースに移行イーサリアムは長年、取引手数料(ガス代)の高さや処理速度の遅さが問題となってきました。これらの課題解決に向け、ブテリン氏はプロトコルを大幅に簡素化し、根本から効率を高める「L1簡素化」を提案しています。その具体策として、**現在スマートコントラクト実行で使われている仮想マシン(EVM)を、オープンソースの「RISC-V」ベースの新仮想マシン(VM)へ移行する方針**を示しました。RISC-Vを基にした仮想マシンではコードを変換せずに直接実行できるため、ゼロ知識証明の処理速度が大幅に上がり、条件によっては100倍以上の性能向上が期待できると説明しています。これによりガス代の大幅低下や取引処理速度の向上が期待でき、**ソラナ(SOL)など高速チェーンに対する競争力強化にもつながる可能性**があります。また、新しい仮想マシンの仕様がシンプルになる点も重要です。これにより、多くの技術者がプロトコルを理解し開発に参加しやすくなり、実装時のバグも減ると見られています。### 「レガシーモード」で既存資産との互換性を維持性能を大きく向上させる一方で、現在のEVMで動いている膨大なスマートコントラクト資産との互換性を保つことも重要な課題となっています。この問題に対してブテリン氏は、**古いEVMの機能を「レガシーモード」としてプロトコル内に残しながらも、新しい仮想マシンによる簡素な実行環境を主流にする二段階の方法を提案**しています。これにより、古いスマートコントラクトも引き続き使えながら、新システムを中心に据えることで長期的な保守費用や複雑さを大きく減らせるとしています。### プロトコル仕様の標準化・統一による簡素化ブテリン氏はさらに、システムの複雑さを根本から解決するため、**イーサリアム全体のプロトコル仕様を標準化し統一することも提案**しています。例えば、ブロックデータや取引処理など複数の場面で共通して使える技術を取り入れて、システム全体をシンプルにします。また、データの扱い方をより単純で速い方式に統一し、取引確認を効率化したり軽量クライアントを使いやすくしたりする狙いがあります。また現在、実行層とコンセンサス層で別々になっているデータ形式(シリアライズ形式)についても、将来的にはスマートコントラクトの入出力やブロックデータ形式を含めて「SSZ」に統一する考えを示しています。さらに、現在イーサリアムで使われている16進数基数木(Hexary Patricia Trie)を、より単純で効率的な2進木構造に変え、コンセンサス層と実行層で共通化することも提案しています。これらの変更により、状態データの証明作成(検証)が速くなり、軽量クライアントでのデータ参照にかかるコストも減ると期待されています。ブテリン氏は「シンプルさは、分散化と同じく強靭さの源だ」と述べ、目先の機能追加よりも長期的な安定性を重視する姿勢を明らかにしました。## イーサリアムL2の現在地と今後のロードマップイーサリアムは現在、L1の簡素化と同時に、レイヤー2(L2)の拡張によるスケーリングも進めています。### DencunアップグレードとL2利用の急増2024年3月に実施された大型アップデート「Dencun(デンクン)」では、EIP-4844(プロトダンクシャーディング)によりL2向けのデータ処理容量が増え、L2の取引手数料が最大で100分の1まで下がりました。この結果、アービトラム(Arbitrum)やオプティミズム(Optimism)、Baseなどの主要L2の利用が急増し、1日当たりの取引件数は約1,242万件と過去最高を記録しました。一方、L1の1日当たりの取引件数はおよそ100万件前後で推移しており、現在のイーサリアムの実際の利用ではL2が重要な役割を果たしていることが伺えます。### 「Fusaka」以降のロードマップ|L1・L2のさらなる強化へ今後のロードマップでは、2025年後半に予定されている「Fusaka(フサカ)」アップグレードにより、**L2のデータ容量をさらに約10倍に増やす計画**が示されています。ブテリン氏もブログで、2026年頃までにL1自体のデータ処理能力も同程度に拡張する案を示しており、**L2とL1の両方を強化することで全体の処理能力を100倍にするという将来像**を描いています。## コミュニティからの反応と今後の課題ブテリン氏の今回の提案に対して、コミュニティ内ではさまざまな反響が広がっています。ビットコイン支持者からは「イーサリアム創設者がビットコインの優位性を認めた」という声が上がる一方、イーサリアム開発者の間では新しい仮想マシンへの移行時期や実現性を巡って慎重な議論が交わされています。ブテリン氏自身も「**短期的には効果が見えにくいが、長期的には必ず価値が出る**」と述べており、これからコミュニティ全体での合意形成が課題となっています。イーサリアムが今後さらに発展していくには、L1とL2の両方での拡張性向上と、プロトコルの簡素化をどう両立させるかが重要な鍵となりそうです。>>最新の仮想通貨ニュースはこちらSource:ヴィタリック・ブテリン氏ブログ投稿 執筆・翻訳:BITTIMES 編集部 サムネイル:AIによる生成画像
イーサリアム、100倍高速化「ビットコインと同じくらいシンプルに」ブテリン氏提案
目次* 1. イーサリアムの新構想|BTC並みの簡素化を目指す
イーサリアムの新構想|BTC並みの簡素化を目指す
イーサリアム(ETH)共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は2025年5月3日に、自身のブログで「The Simple L1 Sharding Proposal(L1簡素化シャーディング提案)」を公開しました。
この提案は、複雑化したイーサリアムをビットコイン(BTC)並みの単純な構造へと作り直し、処理速度を最大100倍まで向上させることを目標としています。
ブテリン氏はX(Twitter)で「ビットコインの最大の強みの一つはプロトコルの単純さだ」と述べ、今後5年かけてイーサリアムをビットコイン並みに簡素な基盤へと作り変える構想を強調しました。
ブテリン氏提案「L1簡素化」で100倍高速化へ
仮想マシンを「RISC-V」ベースに移行
イーサリアムは長年、取引手数料(ガス代)の高さや処理速度の遅さが問題となってきました。これらの課題解決に向け、ブテリン氏はプロトコルを大幅に簡素化し、根本から効率を高める「L1簡素化」を提案しています。
その具体策として、現在スマートコントラクト実行で使われている仮想マシン(EVM)を、オープンソースの「RISC-V」ベースの新仮想マシン(VM)へ移行する方針を示しました。
RISC-Vを基にした仮想マシンではコードを変換せずに直接実行できるため、ゼロ知識証明の処理速度が大幅に上がり、条件によっては100倍以上の性能向上が期待できると説明しています。
これによりガス代の大幅低下や取引処理速度の向上が期待でき、ソラナ(SOL)など高速チェーンに対する競争力強化にもつながる可能性があります。
また、新しい仮想マシンの仕様がシンプルになる点も重要です。これにより、多くの技術者がプロトコルを理解し開発に参加しやすくなり、実装時のバグも減ると見られています。
「レガシーモード」で既存資産との互換性を維持
性能を大きく向上させる一方で、現在のEVMで動いている膨大なスマートコントラクト資産との互換性を保つことも重要な課題となっています。
この問題に対してブテリン氏は、古いEVMの機能を「レガシーモード」としてプロトコル内に残しながらも、新しい仮想マシンによる簡素な実行環境を主流にする二段階の方法を提案しています。
これにより、古いスマートコントラクトも引き続き使えながら、新システムを中心に据えることで長期的な保守費用や複雑さを大きく減らせるとしています。
プロトコル仕様の標準化・統一による簡素化
ブテリン氏はさらに、システムの複雑さを根本から解決するため、イーサリアム全体のプロトコル仕様を標準化し統一することも提案しています。
例えば、ブロックデータや取引処理など複数の場面で共通して使える技術を取り入れて、システム全体をシンプルにします。また、データの扱い方をより単純で速い方式に統一し、取引確認を効率化したり軽量クライアントを使いやすくしたりする狙いがあります。
また現在、実行層とコンセンサス層で別々になっているデータ形式(シリアライズ形式)についても、将来的にはスマートコントラクトの入出力やブロックデータ形式を含めて「SSZ」に統一する考えを示しています。
さらに、現在イーサリアムで使われている16進数基数木(Hexary Patricia Trie)を、より単純で効率的な2進木構造に変え、コンセンサス層と実行層で共通化することも提案しています。
これらの変更により、状態データの証明作成(検証)が速くなり、軽量クライアントでのデータ参照にかかるコストも減ると期待されています。
ブテリン氏は「シンプルさは、分散化と同じく強靭さの源だ」と述べ、目先の機能追加よりも長期的な安定性を重視する姿勢を明らかにしました。
イーサリアムL2の現在地と今後のロードマップ
イーサリアムは現在、L1の簡素化と同時に、レイヤー2(L2)の拡張によるスケーリングも進めています。
DencunアップグレードとL2利用の急増
2024年3月に実施された大型アップデート「Dencun(デンクン)」では、EIP-4844(プロトダンクシャーディング)によりL2向けのデータ処理容量が増え、L2の取引手数料が最大で100分の1まで下がりました。
この結果、アービトラム(Arbitrum)やオプティミズム(Optimism)、Baseなどの主要L2の利用が急増し、1日当たりの取引件数は約1,242万件と過去最高を記録しました。
一方、L1の1日当たりの取引件数はおよそ100万件前後で推移しており、現在のイーサリアムの実際の利用ではL2が重要な役割を果たしていることが伺えます。
「Fusaka」以降のロードマップ|L1・L2のさらなる強化へ
今後のロードマップでは、2025年後半に予定されている「Fusaka(フサカ)」アップグレードにより、L2のデータ容量をさらに約10倍に増やす計画が示されています。
ブテリン氏もブログで、2026年頃までにL1自体のデータ処理能力も同程度に拡張する案を示しており、L2とL1の両方を強化することで全体の処理能力を100倍にするという将来像を描いています。
コミュニティからの反応と今後の課題
ブテリン氏の今回の提案に対して、コミュニティ内ではさまざまな反響が広がっています。
ビットコイン支持者からは「イーサリアム創設者がビットコインの優位性を認めた」という声が上がる一方、イーサリアム開発者の間では新しい仮想マシンへの移行時期や実現性を巡って慎重な議論が交わされています。
ブテリン氏自身も「短期的には効果が見えにくいが、長期的には必ず価値が出る」と述べており、これからコミュニティ全体での合意形成が課題となっています。
イーサリアムが今後さらに発展していくには、L1とL2の両方での拡張性向上と、プロトコルの簡素化をどう両立させるかが重要な鍵となりそうです。
Source:ヴィタリック・ブテリン氏ブログ投稿
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像