* アジアの銀行は、預金流出を防ぎ、国境を越えた金融取引を強化するためにステーブルコインを導入しつつある。* 韓国、日本、香港の大手銀行は、貿易金融の改善と伝統的な銀行業務からの脱却を目的として、自国通貨に裏付けられたステーブルコインの導入を検討している。アメリカではジーニアス法案の上院通過やサークル(Circle)の大規模IPOを受けて、ステーブルコイン関連のニュースが賑やか。一方、アジアではまだ水面下の動きが多いもののステーブルコインをめぐる戦略的な動きが進行しており、この地域のクロスボーダー金融の構造を変えようとしている。アジアの銀行はステーブルコインを預金流出や取引収益の減少に対する防御手段と見なす動きを強めている。事実、ステーブルコインはすでにアジアの金融インフラにおいて重要な役割を果たしつつある。ファイアブロックス(Fireblocks)のアジア責任者、エイミー・チャン(Amy Zhang)氏はCoinDeskの最近のインタビューで、韓国、日本、香港の大手銀行は、こうした脅威に対抗するために自国通貨に連動したステーブルコインを積極的に検討していると述べた。「サークルやテザー(Tether)と取引していなければ、預金を失うことになるのではないか? これは銀行にとって大きなリスクだ」(チャン氏)韓国では、KB国民銀行やSBJ銀行をはじめとする8つの大手銀行が、2026年までに韓国ウォン建てステーブルコインを発行することを目指してコンソーシアムを設立した。これはクロスボーダー取引でUSDTやUSDCの利用が急増していることへの直接的な対応だ。日本では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友銀行(SMBC)、みずほ銀行が、貿易金融やクロスボーダー決済の効率化のために日本円建てステーブルコインの発行を目指している。香港の東亜銀行は最近、米ドル建て、および香港ドル建てステーブルコイン決済ネットワークの試験運用を開始した。決済サービスプロバイダー(PSP)は、ステーブルコインの導入を積極的に進め、高コストな伝統的な銀行インフラから離れる動きを加速させている。「1年前、PSPは『ステーブルコインを導入すべきか』と我々に尋ねていた」とチャン氏。「今では『顧客の取引額が10億ドルに達した。優れたウォレットが必要だ』と言っている」昨年、3兆ドル(約430兆円、1ドル144円換算)を超えるデジタル資産を取り扱ったファイアブロックスは、今やステーブルコインが取引高の約半分を占めると述べている。チャン氏はまた、アジアのEC大手でのステーブルコインの利用拡大を指摘した。最近の報道によると、中国のJD.comは、ステーブルコインを活用してサプライヤーへの支払いコストを大幅に削減するという。この取り組みにはチャン氏も言及していた。香港のPSPであるTazapayは、サークルのUSDCを活用して、米ドルと香港ドルでのクロスボーダー決済を行い、アジア新興市場におけるコンテンツクリエイターやゲーマーへの即時支払いを実現している。Visa Analyticsによると、この週末のステーブルコイン取引高は30%増加しており、リテールやギグ・エコノミーにおける役割の拡大を示している。テザーのUSDTは、流動性とアクセスが簡単なことを背景に、アジアの新興市場におけるステーブルコイン取引の大部分を占めているとチャン氏は述べた。一方、USDCはシンガポールや香港のような厳しい規制下にある金融ハブで導入が進んでいるという。アジアの金融機関がステーブルコインを防衛的に導入し、企業ユーザーが実利的に活用するなか、アジアのクロスボーダー金融インフラの水面下での変革は、ステーブルコインの進化の次の話題となるかもしれない。こうした動きを活かした次のIPOはどこだろうか?|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部 |画像:サークルのジェレミー・アレールCEO(CoinDesk JAPAN) |原文:Asia Morning Briefing: Asia’s Banks Look to Stablecoins to Prevent Deposit Flight
預金流出に備えよ──アジアの銀行がステーブルコインに注目する理由とは:Asia Morning Briefing | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)
アメリカではジーニアス法案の上院通過やサークル(Circle)の大規模IPOを受けて、ステーブルコイン関連のニュースが賑やか。一方、アジアではまだ水面下の動きが多いもののステーブルコインをめぐる戦略的な動きが進行しており、この地域のクロスボーダー金融の構造を変えようとしている。
アジアの銀行はステーブルコインを預金流出や取引収益の減少に対する防御手段と見なす動きを強めている。事実、ステーブルコインはすでにアジアの金融インフラにおいて重要な役割を果たしつつある。
ファイアブロックス(Fireblocks)のアジア責任者、エイミー・チャン(Amy Zhang)氏はCoinDeskの最近のインタビューで、韓国、日本、香港の大手銀行は、こうした脅威に対抗するために自国通貨に連動したステーブルコインを積極的に検討していると述べた。
「サークルやテザー(Tether)と取引していなければ、預金を失うことになるのではないか? これは銀行にとって大きなリスクだ」(チャン氏)
韓国では、KB国民銀行やSBJ銀行をはじめとする8つの大手銀行が、2026年までに韓国ウォン建てステーブルコインを発行することを目指してコンソーシアムを設立した。これはクロスボーダー取引でUSDTやUSDCの利用が急増していることへの直接的な対応だ。
日本では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友銀行(SMBC)、みずほ銀行が、貿易金融やクロスボーダー決済の効率化のために日本円建てステーブルコインの発行を目指している。香港の東亜銀行は最近、米ドル建て、および香港ドル建てステーブルコイン決済ネットワークの試験運用を開始した。
決済サービスプロバイダー(PSP)は、ステーブルコインの導入を積極的に進め、高コストな伝統的な銀行インフラから離れる動きを加速させている。
「1年前、PSPは『ステーブルコインを導入すべきか』と我々に尋ねていた」とチャン氏。
「今では『顧客の取引額が10億ドルに達した。優れたウォレットが必要だ』と言っている」
昨年、3兆ドル(約430兆円、1ドル144円換算)を超えるデジタル資産を取り扱ったファイアブロックスは、今やステーブルコインが取引高の約半分を占めると述べている。
チャン氏はまた、アジアのEC大手でのステーブルコインの利用拡大を指摘した。
最近の報道によると、中国のJD.comは、ステーブルコインを活用してサプライヤーへの支払いコストを大幅に削減するという。この取り組みにはチャン氏も言及していた。
香港のPSPであるTazapayは、サークルのUSDCを活用して、米ドルと香港ドルでのクロスボーダー決済を行い、アジア新興市場におけるコンテンツクリエイターやゲーマーへの即時支払いを実現している。
Visa Analyticsによると、この週末のステーブルコイン取引高は30%増加しており、リテールやギグ・エコノミーにおける役割の拡大を示している。
テザーのUSDTは、流動性とアクセスが簡単なことを背景に、アジアの新興市場におけるステーブルコイン取引の大部分を占めているとチャン氏は述べた。一方、USDCはシンガポールや香港のような厳しい規制下にある金融ハブで導入が進んでいるという。
アジアの金融機関がステーブルコインを防衛的に導入し、企業ユーザーが実利的に活用するなか、アジアのクロスボーダー金融インフラの水面下での変革は、ステーブルコインの進化の次の話題となるかもしれない。
こうした動きを活かした次のIPOはどこだろうか?
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:サークルのジェレミー・アレールCEO(CoinDesk JAPAN)
|原文:Asia Morning Briefing: Asia’s Banks Look to Stablecoins to Prevent Deposit Flight